住宅ローンを恐れると、家を失う可能性があります

家やマンションは、何千万円もしますから、「はい、これ代金ね!」といった具合に現金一括払いで買う人は珍しく、頭金だけ支払って、残りは住宅ローンを利用することが普通です。ただし、住宅ローンを使うと当然金利を支払うことになります。たとえば、800万円の頭金と3,000万円の住宅ローンを使い、平均的な3,800万円のマンションを買うとします。「金利3%、毎月い11万5,000円を返済し、35年間で完済する」という条件では、35年間で総額1849万円もの金利を支払うことになるのです。

36歳のAさんの場合には「金利として支払う額を少しでも減らしてやろう」と、頭金と月額返済額を増やす計画を立てました。その計画とは、①「頭金」を大きくすれば、住宅ローンが減る、②月額返済額を大きくすれば、住宅ローンを早く完済できる、というものです。そこで、1,050万円の「頭金」を積んで、住宅ローンを2,750万円としました。さらに月額返済額を15万3,000円、20年間で完済する設定とし、全部で910万円の金利で済ませることになったのです。

こうして、Aさんは金利を抑えることに成功しましたが、250万円も余分に頭金を積んだので「貯金」は一切ありません。また、毎月4万円近くも余分に月額返済に回したので、新たに貯金をすることもできませんでした。このような状況が1年続いた後、なんとAさんは失業することになってしまいました。失業保険は、給料の50~80%しかもらえないので、15万3,000円の月額返済が払えなくなりました。貯金があれば何とかなるはずですが、頭金を大きく積んだので、蓄えはまったくありません。そのために、Aさんは、マンションを失うことになりました。

仮に、頭金に250万円を追加せずに、月額返済を11万5,000円に抑えておけば、Aさんには300万円近い貯金があったはずです。1年間の失業ならば、十分に乗り切れたはずだったのですが、金利を節約しようとした結果、マンションを失ってしまったのです。誰だって、借金なんて大嫌いですし、金利なんて払いたくありません。でも、住宅ローンを嫌って、多額の頭金や追加の月額返済をしてしまうと、不慮の事態に備えた貯金がなくなってしまいます。金利を節約しても、生活費がなければ生きていけないですからね。

豊かな将来の秘訣は住宅ローンの扱い方にある

住宅ローンが嫌だからと言って、Aさんのように頭金を大きくとって、くり上げ返済をする人がいますが、貯金が空になってしまうため、失業や病気といった不慮の事態になると家を失うことが多いものなのです。住宅ローンを嫌ったために住宅を失うとは、皮肉なことですよね。このために、住宅の基本戦略というのは「小さな頭金」+「大きなローン」ということになります。もっとも、これには前提条件があります。それは、年収に対するローン支払額を15~20%までに自制して「購入価格を年収の5倍以下にする」というものです。

以前は、住宅金融公庫を利用すると。20%の頭金と80%の住宅ローンで、年収の5倍の住宅を買うというのがお決まりでした。しかし、最近の住宅金融支援機構では「10%の頭金と90%の住宅ローンで、年収の6倍以上の住宅を買う」ということができるようになりました。そこで、購入価格を自制する必要があるのです。

また、失業や病気といった不慮の事態への備えとは別に、住宅の基本戦略が「小さな頭金」+「大きなローン」となる理由は、大学費用や老後費用を用意するためでもあるのです。大学費用は物価以上に上昇する可能性がありますし、老後費用は寿命の延びや生活費の上昇によって加算される可能性があるため、これからの時代には大学と老後の準備には「投資」が必要になります。

投資で成功するためには、投資期間を長く取ることが必要です。「大学」の準備には、子どもが生まれてから、最長で18年間の投資期間を利用できますし「老後」の準備には、30歳ではじめれば30年間、定年後も続ければ、さらに20年間の投資期間を利用できます。でも、Aさんのように「住宅ローン」の返済ばかりに集中してしまうと、住宅ローンを完済した時点では「大学」の投資準備ができなくなるばかりか、「老後」の投資準備は、大幅に投資期間を削られてしまいます。

結局、不慮の事態に備えながら、「住宅」を手に入れて、しかも「大学」と「老後」の準備を行うためには、「住宅」の基本戦略は「小さな頭金」+「大きなローン」になるということなのです。理科の時間に「昆虫の目は、複眼になっている」って習いますが、「住宅」「大学」「老後」について「複眼で見ましょう」なんてことまでは、教えてくれなかったかもしれませんね。

大学・住宅・老後は、三位一体で考える

住宅ローンの金利支払い総額を減らすためには、①大きな「頭金」を積む、②追加の「月額返済」を行う方法が考えられます。仮に3%の固定金利の住宅ローンを利用して、3,800万円のマンションを買う場合「頭金」を800万円、「月額返済額」を11万5,000円、「返済期間」を35年間とすれば、金利支払い総額は1,849万円ですが「頭金」を1,050万円、「月額返済額」を15万3,000円、「返済期間」を20年間とすれば、金利支払い総額は910万円となります。

しかし、金利支払い総額を減らすために、たとえば10年間で706万円を銀行へ追加返済してしまえば、失業時には手元資金が枯渇して生活費がなくなり、住宅ローンが支払えなくなります。また、住宅ローンを完済してからでは「大学」への投資期間は失われ「老後」への投資は退職金を貰ってからということになります。したがって「住宅」の戦略は、適正な購入価格を査定したら、小さな「頭金」十大きな「住宅ローン」が基本となりますし、「住宅」の戦略のありようが、すべての家計管理に影響を与えるのです。

— posted by 宇多元 at 05:45 pm